選ばなかった未来
帰り道にいつものバスを降りて、走り去る「3」のバスの後ろ姿を見ながら、「あのままバスに乗っていたら、今頃あの辺りにいるんだな」と何となく立ちつくしたまま思った。
バスはどんどん離れていって、乱視のわたしにはどれがどのテールランプだか、あっという間に分からなくなった。
選ばなかった未来はこんな風にいつも身近にあったのだ。
あのままバスに乗って、駅について、新幹線に乗ることだって出来た。
日常、私達はたくさんのものを選んだり選ばなかったりして生きている。
その分岐先が見えないだけで、無数の未来が自分にはあったのだ、あったんだなあ。
この季節の割に暖かくて強い風に髪の毛をめちゃくちゃにされながら幸せな気持ちになった。